はしがき
本書は、立命館大学政策科学研究科発足時から活動を続けてきた地方分権に関する「リサーチプロジェクト」による成果を取りまとめたものである。
政策科学部は1994年に設立され本年で10周年を迎えた。本書も学部創立10周年記念事業の一環として出版されたものだが、研究科は学部の完成年度を待たず1年前倒しで設置されたので、発足以来7年を経過し8年目に入っている。
政策科学研究科はマスターコース修了に必要な30単位のうち、2年在籍すれば16単位になる「リサーチプロジェクト」と呼ぶ演習を中心に運営しており、これは、複数教員による特定の研究課題を設定した研究事業を進め、これに院生を参加させて指導するという形態である。このユニークな大学院科目は3・4年ごとに研究テーマを変え、メンバーシップをリシャッフルすることにしてい
るが、設立以来、地方分権にかかわる課題をテーマとするプロジェクトは一貫して置き続けられている。90年代より浮上した構造改革・分権改革の課題は、攻策実践の上でも重要であり、研究テーマとして常に新鮮なものであり続けているからである。
この間、政策科学研究科は多くの修了生を世に出してきた。なかでも地方分権を課題とするわれわれのリサーチプロジェクトには地方公務員などが現職のまま受講生として参加し活発に議論を交わしてきたので、学部卒の進学者は彼らとの議論を通じて、中央・地方の公務員が分権改革・構造改革の進む中、どのような課題に立ち向かっているのかの認識を新たにすることができた。また、2002年度、2003年度には、このリサーチプロジェクトの教員が中心になって、全国の知事をゲストスピーカーとして招き、学部で講義をしてもらう「知事リレー講義」の企画を実施してきた。結果として、われわれのリサーチプロジェクトから、研究者はもちろんだが、中央・地方の公務員や報道関係などに進出ずる人材が多く育つことになった。
修了生が提出した修士論文には優れたものが多く、一部は『政策科学』に掲載されたが、この機会に、地方分権に関わるテーマ設定の修士論文にそれぞれ原著者によって手を加え(うち一編だけが事情により編者による整理を行った:第3部第1章後書き参照)、本書を編むこととした。政策科学研究科のいわゆる分権リサーチプロジェクト7年の成果をまとめるとともに、現在もなお進行中の分権改革の課題について、さまざまな視点からの問題提起を行うことが目的である。
最後に、本書の筆頭編著者をお引き受けいただいた田村悦一先生への感謝を記させていただく。このリサーチプロジェクトに最初から関わり、今なお籍を置いているのは佐藤だけになったため、この「はしがき」を書かせていただいているが、起ち上げの時期から一貫して教員・院生の集団を指導していただいた田村先生には関係者が等しく尊敬と感謝の念を捧げているところである。先生には編者として本書の編纂にもカをお貸しいただいたが、この紙面を借りて改めてこれまでのご指導に本リサーチプロジェクトー同の感謝を捧げたい。
また、出版事情厳しき折から、この企画を検討し、快く出版をお引き受けいただいた日本評論社編集部の中野芳明氏にも感謝したい。
2004年12月編著者を代表して 佐藤 満
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