いよいよ質の競争激化へ
(2003.7.9更新)
介護保険制度の浸透とともに、居宅系のサービス利用者数が伸びている。
その背景として、ますます拡大する介護保険市場をデータでみることにする。介護保険事業状況報告(暫定)月報の15年3月分を前年同月の14年3月分と比較すると介護保険の利用が全体的に伸びていることがわかる。
この間の1号被保険者数は、14年3月の約23,167,000人から15年3月では約23,933,000人と約3.3%しか増えていないが、要介護認定者数は、14年3月の2,876,000人から15年3月では3,322,000人と約15.5%(446,000人)の増加となっている。14年3月と15年3月の同月対比で2号被保険者を含む居宅介護サービス受給者の介護度別の伸びを見ると、全体の伸びは19.2%であるが、要支援が25.8%、要介護1が24.5%、要介護2が17.6%、要介護3が14.0%、要介護4が9.8%、要介護5が6.0%となっており、介護度が軽いほどサービス利用者数が伸びている。受給者数では、要介護1が約71万人、要介護2が約39万人、要支援が約31万人の順となっており、要支援、要介護1で約100万人以上と居宅サービス受給者約193万人の50%以上を占めている。
この市場の伸びを見込み、これまで収益改善を優先していた全国規模の訪問介護事業者は、都市部を中心に拠点を拡充する動きが活発になっている。ニチイ学館は、拠点拡大を中断していたが、約50ヵ所の増設をめざし、今期末には670から680ヵ所になる見込みである。また、コムスンは、一時350ヵ所程度まで縮小していた拠点を約500ヵ所以上に戻し、さらに拡充する見込みである。その他、日本医療事務センターも首都圏中心から中核都市での開設に力を入れ、今後3年間で約90ヵ所を増設する。ジャパンケアサービスも3年後には約200ヵ所以上にする見込など、新たな市場の確保に走っている。
新たな事業者の参入により量的な拡充が図られると、次に求められるのが質の向上である。利用者の事業者選択権が強まり、そのニーズに応える様々なサービス提供が行なわれるであろう。訪問介護でいえば、ヘルパーそのものの質の向上が問われ、ひいては事業者の質が問われることとなる。競争に勝つための質の向上、差別化には具体的に「売り」を持つことである。生活援助でいえば、利用者は、どのヘルパーも掃除・洗濯や料理もできることは基本的条件として当然視している。この掃除・洗濯・料理を主婦からプロの仕事へとレベルアップすることは重要ではないか。優しい気持ちだけのケアではなく、具体的にシェフのように料理の上手なヘルパー、ハウスキーパーのように手際のよい掃除をするヘルパーなど、これからは家事の分野別でヘルパー個人の指名がかかるカリスマヘルパーが求められる選択の時代になるのではないか。家事の延長での主婦ヘルパーからプロのヘルパーとなるよう研鑽を重ねスキルアップを目指すことが必要である。
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