「介護保険制度」見直し〜質の向上を考える〜
(2003.12.16更新)
平成17年の大幅な改正をにらんで、社会保障審議会の介護保険部会で介護保険制度の見直しが検討されている。第5回の部会では、これまで日本医師会・日本看護協会・全国市町村・老人保健施設協会などから提出されている意見を踏まえ、以下のような内容を論点整理として提示されている。
1.制度の見直し全般では、給付と負担の関係において健全に進んでいるものの、将来も維持できるかが課題とされている。維持可能な制度とするためにも、被保険者範囲の拡大や財源の負担割合も含め抜本的な見直しも視野に入れるべきである。
2.保険者のあり方では、小規模な自治体では保険のリスク分散が出来ず、保険料負担が高くなっている。市町村合併の流れからも現行の市町村単位のあり方を見直し、都道府県単位を基本とした広域化を推進すべきである。
3.被保険者の範囲では、障害者施策の議論と介護保険制度の議論をリンクして行なうべきである。被保険者の範囲の拡大は、給付対象の拡大とセットで議論すべきである。
4.給付のあり方では、要支援の取り扱いで介護保険の枠外のサービスで対応できないか。要介護1を含め、改善率が低い。予防給付にかかわらず、2年後には重度化している。要支援なのに車椅子やリフトが給付されているなど問題を指摘する意見が多い。
5.在宅と施設のあり方では、施設と在宅のバランスを是正すべき。利用者の負担額を含めた保険給付の均衡を図るべき。
6.サービスの質の確保では、ケアプランの質を検証する能力の付与や第三者機関によって評価される仕組みが必要。独立性・中立性が確保されるよう制度改正が必要。また、グループホーム以外のサービスに対する第三者評価が必要。ヘルパーの登録型が増えていることから、労働環境の向上を含め、ヘルパーの質の向上について検討すべきという意見が出ている。などどの団体からの提案も概ね内容は近いものがある。
その中でも福祉自治体ユニットの改革提言は、少しユニークである。いくつかの項目について提言しているなか、「サービスの質の向上」のなかで介護報酬体系の改革を上げている。介護報酬を時間単位の支払いからサービス単位の支払いへ変更するというもので、科学的なサービス単位(ケアモジュール)を精査・整理し、体系化するのである。サービスの価格は提供されたサービスそのものによって決定されるものである。例えば、整髪が30分で終わろうが、2時間かかろうが、同じ髪型を整えるのに価格の差はない。「何のために、どんなサービスを、いくらで」提供するかを取り決めるのが契約である。時間単位のサービスと報酬支払いはこれを曖昧にしてしまうと指摘している。具体的なサービス内容が明示されていないため、サービス提供者と利用者の共通な認識が成立しない。これを解決するために介護サービスが目的、効果、手順が明確にされたサービス単位(サービスモジュール)が有効となるとしている。量より質がこのような形で求められる日もそう遠くないであろう。質の向上を真剣に考える時期は近い。
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