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満つれば欠ける、好機にこそ明日への備えを   (2004.2.16更新)

 先の1月19日の日経新聞によれば、介護関連事業を手掛ける大手9社の今期は、日本医療事務センターを除く8社が経常利益の増益になる見込みと報じている。
 各社とも経常利益率5%以上を確保しているなか、ニチイ学館の連結経常利益は2期連続で過去最高を見込むなど、まさに順風である。
 約4年を迎えようとしている介護保険制度が徐々に定着し、介護サービス利用者が増えていることが、収益に大きく寄与している。また、昨年4月の介護報酬改定でわずかながらの引き上げも居宅サービス事業者にとって、追い風となっているようだ。これらの要因は、当然ながら居宅サービス事業者の規模の大小に関わらず、増収増益をもたらしていると思われる。

 反面、介護保険の給付面から見ると、要介護認定者数の増加が著しく、制度発足時の218万人から、3年後の15年4月時点で約350万人まで増加している。これをうけ保険給付額も増加し、制度発足時の月額2,190億円から15年4月時点では4,108億円と伸び、16年度の予算概算要求では5兆2852億円まで膨らんでいる。
 厚生労働省の予想以上に早い時期から利用者が増え、給付と負担のバランスが崩れている状況である。このままでは、各自治体の第3期目の保険料も大きく見直さなければならない状況は必至である。当然ながら、現在、厚生労働省では保険制度の維持可能性を図るため、17年度に向けた介護保険制度の改正として、保険給付費の抑制、保険財政の健全化のため被保険者範囲の拡大など負担と給付を見直す作業に入っている。
 冒頭のように利用者数の伸びが各居宅サービス事業者の増収増益に寄与しているならば、その伸びの大きな要因となっている要支援、要介護1への給付のあり方を見直し、要支援者への生活援助サービスとして、予防給付に重点をおいた内容を義務付けてくるようである。また、給付額の抑制するために、好決算を理由に、次回の介護報酬の改正では介護報酬を引き下げてくることも考えられる。

 現状のように利用者の増加、介護報酬の改定の恩恵など、事業者自身の企業努力以外の理由でもたらされた利益なら、その追い風はすぐに止み、逆風となってくることは容易に推察できる。いわば、厚生労働省の匙加減で如何様にも振り回されることとなる。健全な事業者が立ち行かなくなるような改悪はないまでも、財源不足や保険給付額の抑制から17年以降、経営環境は厳しいものになるであろう。 
 そのため、まだ状況の良い間に増収原因をしっかりと見極め、利用者の支持が得られるようサービス内容を見直し、利用者の信頼を得られる人材の育成とサービス内容の充実を図ることが重要である。今日より明日が厳しくなることを意識し、厳しい環境でも抵抗力のある事業環境の整備に取り組むべきである。


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