介護事業経営概況調査からみる介護報酬の行方
(2005.10.4更新)
9月12日に社会保障審議会が開催され、「第28回介護給付費分科会」の資料で「介護事業経営概況調査」が公表された。
周知のように、この調査は介護報酬設定の基礎資料として、各々の介護サービスについての平均費用等の実態を明らかにするため、全国の介護保健施設、指定居宅サービス事業者並びに指定介護支援事業者等を抽出して行われている。(調査数は全ての母集団数約47,000のうち約3,200を抽出し、有効回答数は約1,700。調査時期は16年9月の収支状況である)
その内容の一部を概観しながら、今回の報酬改定の方向性を探ってみる。
「訪問介護事業」では、有効回答数468のうち、営利法人が149(31.8%)、社会福祉協議会110(23.5%)、社会福祉法人85(18.2%)で回答の7割以上を占めている。
訪問介護事業所全体の補助金を含まない収益は、月次で平均の実利用者数69.5人、収入3,397,000円、支出3,440,000円(うち人件費率:86.3%)、損益−43,000円、利益率−1.3%となっている。前回調査<14年4月:平均の実利用者数70.1人、収入2,918,000円、支出2,976,000円(うち人件費率:86.5%)、損益−59,000円、利益率−2.0%>と比較しても、少し利益率の改善が見られるものの、収益構造は変わらず大きく利益が出ているとはいえない状況である。その他で利益率がマイナスとなっている事業は、「居宅介護支援」が利益率−15.9%(前回:20.2%)、「訪問入浴」が利益率−0.4%(前回:−0.2%)となっており、いずれも前回同様マイナスとなっている。短絡的に考えると、この3事業は今回の改定で大きく引き下げるには理由が弱いという感じである。
逆に利益率がプラスになっている事業は、「通所リハ」の16.5%(前回:13.2%)、「訪問看護ステーション」の10.4%(前回:16.1%)、「通所介護」の7.9%(前回:7.4%)、「短期入所生活介護」の7.1%(前回:14.1%)となっており、総じて医療系サービスの利益率が高いことが分かる。その他住居系として「グループホーム」の8.7%(前回:8.1%)、「有料老人ホーム」の9.1%(前回:4.9%)となっている。これらの事業では、訪問看護を除く給与比率が50%〜60%程度と訪問介護や訪問入浴などに比べてかなり低く抑えられている。これらのサービスは、このような現状を踏まえて今回の介護報酬改定でかなりきびしい報酬が示されることが推察される。
事業者にすれば常勤雇用を出来るだけ減らすことで福祉職員の人件費を安く抑え、企業努力でなんとか利益を出しても、まだ余裕があると解釈され、その分改定で報酬を引き下げられる。ますます保険財源がきびしくなるが、人的サービスが主となる介護において、診療報酬の薬価と同じような仕組みでは、事業者の事業意欲の後退を助長し、介護の質の向上が図れないのではないかと先行きが案じられる。
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